若さと美しさ
娘の体育祭で、少し離れた位置から綱引きを眺めていた。
砂埃の舞うグラウンドに置かれた綱を挟んで並んでいる、若さと生命力に溢れる子供たちを見て思った。
ついこの間、まだ小学生だった中学生たち。
彼らもいつか順番に亡くなっていく。
順番は誰も知らない。
でも亡くなっていくことはわかっている。
だから、それまで生き抜いてほしい。
子供達の間でボンボンドロップというシールが流行っているらしい。
そういうものにお金をかける主義ではない両親の元に生まれてしまった私の娘は、せいぜい100円ショップのそれっぽいシールしか手に入れることができていないが、どうやらシール交換で苦渋を舐めているという話があり、さすがに可哀想になって1つくらい買ってあげるかと思い、amazonで検索した。
案の定、定価500円のところ2,000円で売っていたので、タブをそっ閉じした。
翌日、ボンボンドロップが高い値段だったらamazonで売っていたよと伝えると、どうやら偽物が多数流通しているということで、製造元の「サンスター」ではなく「サンソター」だったり、「サンリオ」が「サンリ才」だったりするものを高額でつかまされる事案が多発しているから気をつけるようにとのことだった。
私の小学生時代にはビックリマンチョコが流行り、「ロッチ」が偽物の定番中の定番だった。ロッチはお菓子ではなくガチャガチャで数枚まとめて手に入るシールだった。
そのうちしっかりと「ロッテ」と書いてある偽物も出回ったが、印刷が妙に安っぽいため、小学生でも判別できるようなものだった。
あれから30年以上経った。
いまでもこういう商売はあまり変わっていないんだなと、ある意味感心した。
そして、「人生は騙し合いよ〜」と、映画かなにかで聞いたセリフが、ふと頭をよぎった。
多摩の右端、調布市で育った。
隣は世田谷区なれど多摩は多摩。よくある昭和・平成期の平凡な、田舎でもない都会でもない街だった。
小学校から自宅まで、直線では移動できない位置関係にあった。
右の坂を下っていくか、左の道か、どちらかから回り込むように移動しなければならない通学路だった。
右の通学路の方が幾分か近かったことと、右の通学路で通る裏路地が気に入っていたので右を選びがちだったような気もするが、もう記憶は霧の向こうにあるようでよくわからない。
左の道を進んだ場合、文房具店のある場所で右折してしばらく進み、京王線の踏切を越え、少し広い道までしばらくまっすぐ進む必要があった。ふと、この踏切を越える道が車が通行可能な道幅だったかそうでなかったかが、なぜだか気になった。
先日たまたま調布市の話題に触れたことであの頃を思い出し、なぜかあの道が目に浮かんだ。そして、不意にそんな疑問が頭の片隅に住み着いた。
Google Map で確認すると、あの踏切は地下道になり、なくなっていた。右の坂を下っていく通学路にあった細い裏路地も車1台は通れる幅に拡張されていた。おそらく防災の兼ね合いだったりとかそういうことだろう。
黒いランドセルを背負った小学生の私が踏切の中央に立つ。多摩川方面の線路に目を向けると、左はただの空き地で右は広い畑があるだけで、周りに背の高い建物はない。線路の先に陽のしずむ空がパノラマに広がっていた。
裏路地には隣接する住人が植えたであろう野菜や草花が生え、路地の隅の木々が鬱蒼としたところには雨に打たれて腐った週刊誌やエロ本が転がっていた。
あの道を私は歩いていた。