meow

🐈

YESTERDAY
10
SEP.
21:14

境界線

母の実家は静岡県の今は伊豆市となった、修善寺というところ。
修善寺の中でも外れにある、本当に静かな地域だった。川沿いの田んぼ、ざわめく竹林。今時の乗用車では通れないような細い道路。カエルの鳴き声。土の匂い。絵に描いたような田舎だった。

そんな田舎で過ごしていたある日、車で移動中に運転する祖母に言われたことが記憶に残っている。

「ここから先が穢多(えた)の地域だったんだよ」

なんでそんなことを祖母が言ったのか、何も覚えてはいない。祖母は私が知る限り差別的な振る舞いや思想を見せたことはなかったので、今となってはまあまあな発言だとは思うのだが、とにかく祖母のそのような発言に、へえ... となった記憶がある。
歴史の授業で差別の話は登場するので、穢多・非人と言ったキーワードをその時の私は知っていたと思う。その私が何か質問し、それに対する回答みたいなことだったのかもしれないが、私がなぜそのような質問をしたのかも覚えていない。
全国水平社の棒?みたいなのがちょこちょこと道端に刺さっていた時代なので、何かそういうものを見ての話だったのかもしれない。

いずれにせよ、夏だったか春だったかの長期休みを過ごしていたあの修善寺の田舎で、私は今では不要になった境界線について、思いを馳せる時間があった。そういう1990年代だった。

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