ガニ股歩きの女性
自宅に向かって近くの商店街を歩いていた。
特に何を考えるでもなくぼーっと前を歩くおばさんをみていると、ふとその歩き方に見覚えがあるなと感じた。ガニ股気味にのそっのそっと歩く女性に見覚えがある。そう、以前働いていた会社の上司だった。
その上司とは正直なところ、合わないなと思っていた。私の軽薄な性格や気乗りしないことは積極的に避ける性格をしっかり見抜かれていたので、シンプルに嫌だった。彼女に見抜いてますよね?と聞いたわけではないが、まあ、見抜いていただろうと思う。如何せん性格が合わない。合わないのだからこそ、わかっていただろうと思う。
彼女はその会社のオーナーのお気に入りでもあり役員も務めていたのでペーペーの自分に何かできることもなく、様々な場面で適当に流し続けていたが、その辺りもきっと彼女にとって、とても気に入らなかったのだろうと思う。
時は経ち、私は退職しデザインの仕事をメインにしてしばらく経った頃、当時のオーナーからサービス紹介資料の制作依頼があった。
様々な事情であまりにお世話になった方だったので断るという選択肢はなく、ありがたくお受けしたが、打ち合わせのために会社に出向くのが、少し憂鬱ではあった。いくつか原因はあるが、一番はあの上司に会ってしまうのが嫌だったからだが、私の知らない社員さんに会議室を案内され待っていると、懸念していたとおりオーナーより先にその上司がやってきた。
元気?とか当たり障りのない会話だったろうと思うが、ほとんど記憶はない。ただ、彼女の目の奥で、私は気づいていたよ、お前のよくないところをいっぱい、と言っているようで、ずっと憂鬱だったように思う。
あれからさらに時は10年以上経つだろうか。
その間に、その会社の別の上司が癌で亡くなったことや、一度だけ社長と飲みにいったこともあった。年賀状のやりとりもあったが、本当に縁が途切れたような状態になっているが、ガニ股歩きの女性に気づいた瞬間、私はあの上司を思い出した。懐かしいなという思いもありつつ、でも、やっぱり会いたくはないなと独りごちた。
