文房具店、そして資本主義
近所に文房具店が何軒かあった。
そういう時代だった。
小学校の正門の目の前には通称「ふじぶん」が、正門を出て左に向かい数十メートル進んだ先には「こじぶん」があった。それぞれ富士文房具店、小島文房具店だった気もするが、違うかもしれない。
ふじぶんの店主であるお婆さんは客である小学生からすこぶる評判が悪かった。裏の畑と大きな古い主屋の持ち主なのにケチであるとみんな陰口を叩いていた。
当時よく買った丸いガム。10円からそこらで箱からランダムに色付きの丸いガムがでてくる。
色によって当たり外れがあり、当たると100円分とかそんな感じだったと記憶しているが、ふじぶんのお婆さんは意図的に当たりの色を抜いているとまことしやかに囁かれていた。
店内で何を買おうかとウロウロしていると、早く買って帰れと言わんばかりの不機嫌な表情でこちらを見ていた。絵に描いたようなへの字口だったと記憶している。
対するこじぶんのお婆さんは、小さくて優しい人だった。
いつも柔らかい笑みで子供たちの相手をしてくれていたように思う。ただ、店内は狭く鉛筆やノートといった必需品がメインで、お菓子やおもちゃはあまりなかったように思う。
必然的に学校の目の前にある品揃え豊富なふじぶんの方に通う回数は多かった。
資本主義という圧倒的な格差の構造の力は、あまりにも明白だった。
